湯浦地区地域優良賃貸住宅公募型プロポーザル案
熊本県で起こった令和2年7月豪雨で被災された町民や移住希望者が、安全安心を実感できる住環境を整備し、地域優良賃貸住宅を整備するためのプロポーザル案です。
この地域の最大規模の降雨を想定し、各住戸の二階部分を持ち上げ、ベランダによりつなぐことで、災害時の避難場所の創出と新たな地域コミュニティーの形成を測ることのできる賃貸住宅を提案しました。
周辺の環境特性を活かした豊かな自然を取り入れら住環境を目指す
雄大な山並みと穏やかな湯涌川の流れに囲まれた敷地の特性を活かした設計を考えました。谷を南北に流れる湯浦川に沿った「まちの軸」、 周囲の山や湯浦川から吹く「風の軸」、そして東 西の山を望む「眺望の軸」を意識し、敷地内に周 辺の豊かな環境を緩やかに取り入れる建築の在り 方を構想しています。災害に見舞われたこの地だからこそ、自然との共生 が可能となる住まい方を提案しました。
また、画一的になりがちな共同住宅の住棟配置を、敷地 中央をゆったりと囲いながら、「まちの軸」に沿 った前面道路側におおらかに開くことによって、 地域のにぎわいを敷地内に引き込むよう配慮しました。
「風の軸」と「眺望の軸」に沿って、風と視線の 通り道を設け、緑・風・空などの豊かな自然と人々 の暮らしが常に共にある住環境を目指しています。
地上5.0mですべての住戸をつなぐ 「みんなのベランダ」
各住戸は2戸で1ユニットを基本としながらも、上 下階をズラすことによって、各住戸がまるで数珠つなぎのように緩やかに連続した空間構成とします。
地上5.0mの高さに設けた 「みんなのベランダ」 が、全ての住戸の2階部分を繋ぐ共用スペースとな ることで、ここにしか生まれることの無い新しい活動の舞台となります。
「みんなのベランダ」は新しい暮らしの風景が生まれるゆりかごのような場所です。
県産材とCLT材の活用
「みんなのベランダ」や住戸内のしつらいは県産木材の活用を前提としています。屋根は床は「CLT材」とし、柱は「杉材」とするなど、各部に適した材を採用することで建築の長寿命化を図ります。「CLT材」とすることで一部の天井仕上げと断熱が不要となると同時に、梁型が出ない構造方式を採用することが可能となるため、床懐を設備スペースとして活用することが可能となります。「CLT材」は高価なイメージがありますが、仕入れの方法によては比較的安価に調達できることが実績として分かっています。
環境特性を活かした住環境の設計
各住戸に地下ピットを設け、クール・ヒートピ ットとして地中熱を活用することで空調負荷の低減を図ると同時に、ベランダにかかる大きな庇により室内への必要以上の日射熱の侵入を抑えます。
多様なライフスタイルを受け入れる
「みんなのベランダ」から住戸内に向かってパブ リックからプライベートへと3段階の居場所を作 ることによって、住民は多様なライフスタイルに 合わせて思い思いの過ごし方ができます。
※Co/w:M.DESIGN ASSOCIATES 一級建築事務所、ixrea