北陸の地において、建築を明るくおおらかに開くこと/能美の高床

建設前の敷地の風景。



Story

計画地は約10年前に計画、建設した母屋の隣の敷地です。

母屋の住人は、中庭越しに見える桜並木や空への視界の広がり、通風、日当たりの良さ等のこれまで得られていた気持ちの良い生活環境に満足して暮らしており、今回の住宅はそれらを阻害せぬよう計画を行う必要がありました。
それと同時に、この地の気候風土に寄り添った建築を目指し計画を行っていきました。

イメージスケッチの作成と同時にコンセプトを整理。
可能性の追求。様々な形から、母屋との最適な関係性を探る。
形状の確認。
配置バランスの確認。シンプルな宙に浮いた直方体形状にまとまる。

母屋との関係性を保ちながら、この敷地環境に馴染む建築の探究。内と外、母屋と計画建物、軒下空間と人の流れがシームレスにつながり合いながら、生活の豊かさの向上を図る建築を模索していきました。

「新たな北陸建築」のあり方を求めて。

北陸のこの地は、年間を通して曇り空や雨の日が多く、また冬になると雪で閉ざされてしまう。
その結果、生活は内に篭りがちになり、建築もまた、外部とのつながりよりも内部空間の充実を求めどこか閉鎖的になる傾向がある。
そのような環境の中でこの住宅では、この地域の風土に根ざしながらも、人びとの営みがより外部に顕在化してくる「新たな北陸建築」のあり方を求め、建物の大半を宙にもち上げ、室内空間よりも大きな軒下空間を持つ建物構成を考えました。


人々をもてなすための「土間空間」

金沢の伝統的町屋には、人々をもてなす空間としての土間が広がっています。この住宅では、それをより外部に顕在化した姿として広い軒下空間を設え、人びとが天候に左右されず安心して過ごすことのできる開かれた場として地域に開放しています。
今では、冬の雪深い時期には子供たちの登校の待ち合わせ場となったり、家族、地域の人びととの交流の拠点としても大いに活用されています。
とにかく室内空間を大きくするという発想ではなく、必要最低限の内部空間と広い外部空間の掛け合わせがより、快適な生活のゆとりが生まれています。

構造は積極的に木の現し仕上げとすることで、常に木陰の下にいるような心地よい空間として形成しています。

また、居住空間を2階に集約させることで、田園地帯である周囲の四季折々の風景を見渡すこともできますし、宙に浮かすことで、人々の繋がりと母屋が享受してきた視線の広がりや通風などの快適性の担保を両立させることができました。

広い軒下空間が生む自在性

「能美の高床」の構成は母屋との良好な関係性の構築により生まれたものです。
ただ、その中で、北陸に建つ建築の有り様も考え続けた住宅でもあります。
「砺波の大屋根」と同様に広い軒下空間が生む自在性に可能性を感じています。
北陸のこの地において、軒下空間をもって建築をおおらかに開き、地域に根付くことで生まれる活力ある人々の営みが、この地の新たな日常を構築していきます。

この建物は、モデルルームを兼ねた自邸になります。

随時見学可能ですので、ご希望ありましたらお気軽にご連絡ください。

Photo by Takashi Mukai