街中に建つ大樹のカフェ

街中に建つ大樹のカフェ

街中に建つ、地域に開かれたカフェの計画である。

施主はこの建物を通して、地域の方々が気軽に訪れる事のできる場の創造と、それに伴う自社ブランドの向上を望んでいた。

建設地は大型施設が建ち並ぶ地方都市の中にあり、商業的かつ工業的な雰囲気が混ざり合う雑然とした街の一角である。

どこか冷たく、自然味の感じられない乾いた都市環境の中で、建築が“その存在をあるがままに表現していく強さ”を持つことで、この地に、生き生きとした状態・場をつくり出すことができるのではないかと考えた。

具体的には、主要構造を木造とし、できる限りその構造躯体・耐力部材に至るまで隠さず表し、それがファサードとして生きるよう計画を行ない、人工的な町の中に大きな枝葉を広げた大樹の集合体のような建築を計画した。

森の中にいるような気持ちの良さと、木々の持つ力強さを体現したような建築である。

エントランスより建物内部に入ると、大樹を支える大きな枝葉のような力強い躯体が天井を覆う。木素材以外は白とグレーのモノトーンの背景を用意し、構造躯体の解像度を高めている。
2階に上がるとその枝葉はより細分化され軽やかさを増す。

この地の持つある種商業的に画一されたデザインコードから建築を脱線させ、自然環境から生成される存在の一部として読み替えていくことで、ここに訪れた人々がより、自然体で緩やかな時間を過ごすことができるよう場を整えた。

また、木を使うことは単に空間形成とは別の意味も持つ。

木を積極的に活用していくことで、「建築行為」自体が都市部での森林資源の新たな需要となり、「木の循環」の一部となる。
木材の中には二酸化炭素のもととなる炭素が固定化されている。
木造建築の中で木の姿をとどめているあいだは炭素貯蔵という点においても建築自体が第2の森林、都市の森であるとも考えることもできる。

この建物が、次世代につながる建築のあり方、企業と社会との関わり方、そして人と都市、自然との関わり方、その全てのつながりを考えるきっかけの場となることを願い、本建築を計画した。

1st floor

2nd floor

Photo:MARK AND PORTER PHOTOGRAPHY

Collab:toit-design