Story
2020年7月、熊本県内最大の河川であり、最上川・富士川と並ぶ日本三大急流の1つ球磨川が氾濫し、それに面する広範囲の地域が甚大な被害を受けました。
観光地として栄えた熊本県人吉市も例外ではなく最大水深4mの浸水被害によりその機能を失った。 コロナ禍による社会情勢も拍車をかけ、現在でも復興に時間がかかり、多くの方々が不安の中で生活をおくっています。
本提案は、CLTという新たな素材をこの地に導入していくことによる地域再生、復興を考えるものであり、その延長線上に未来のホテルのあり方を提示するものであります。
人吉旅館の再生からの地域復興
今回の提案では、この人吉地区にある人吉旅館の再生からの地域復興を考えています。
人吉温泉を代表する近代和風建築として知られ、また国登録有形文化財でもある人吉旅館も、1階部分が全て浸水し全壊判定を受けました。
現場でも専門家や建築士らが復旧支援に取り組んでいるが、その周辺地域の復興も思うようには進んでいませんでした。
このような状況の中、本提案では、人吉旅館を中心とするこの地域の復興をCLT部材の活用をもって目指しています。
未来の宿泊ビジネスモデルを考える
今回の計画では、失われた街の機能の復興と新たな地域復興型のホテルのあり方を同時に考えることにより、未来の宿泊ビジネスモデルを考えます。
一企業によるホテル運営ではなく、地域創生を見据えた地域の人々の活力によるホテル観光ビジネスの創出 。 建築を住宅規模でのスケールの分節により計画していくことで街にホテル機能がアメーバのように広がっていきます。
各種地域自治体の連携
地域復興型ホテルは、市民を中心とした、行政や企業 、各種地域自治体の連携により成り立つものであります。
運営主体とそれを取り巻く様々な機関との繋がり、地域コミュニティーの形成をもって完成します。
地域振興の核となる体制が協働により成り立つ仕組み、その醸成の先に、ホテル観光を中心とした地域復興ビジネスを生み出します。
CLT高床式建築の地域への広がりについて
小さなスケールによるCLTの活用を考えていくことでCLT高床式建築の仕組みは、住宅等の規模の小さな建築物にも活用していくことができます。
大断面のCLT材を生成するにはそれ専用の製材機を必要とするが、最大サイズ一辺が4m程度の小サイズのCLTを活用することで、地域のプレカット工場でも生成できるものとなリマス。
施工の明快さとCLT高床式建築の仕組みはCLTが既存ストックを活用しながら国内産業において普及していくための可能性を持つものであると考えています。
※Co/w:建築士会有志