街の風景と田園地帯の環境を捉えた軽装備な住宅/南砺の平家

Story

計画地は典型的な日本海側気候になります。
山々に囲まれ、特に南西方向の山々からの吹き下し風が降り注ぐ風の街でもあります。日々吹き下す穏やかな風、フェーン現象による「井波風」、冬の凍てつく風等が年中流れています。
年間日照時間が少なく、降水量も多い。積雪量も1mを超えることもあり、夏はフェーン現象により猛暑日を記録することもあります。
このような環境の新興住宅街の中に計画地は位置しています。
「南砺の平家」はこれらの環境を受け入れ、この地ならではの建築を目指した小さな住宅です。

周囲の山々からは一年を通して、「吹き下ろし風」が流れ続ける。
敷地前に広がる田園風景。
田園風景とは対照的に形成されているカーポートが立ち並ぶ街並み。



カーポート」による街並みを肯定する

この豊かな自然環境に合わせ、この地域の街並みは積雪地域に多く見受けられる敷地正面にカーポートが立ち並ぶ街並みが広がっています。
敷地前に広がる田園風景とこの街並みに調和する建物のあり方を同時に考えていきました。
一般的にはネガティブに添えられがちな要素を見つめ直すことで、地域の新たな景観形成に作用することができたらと考えていきました。

どこまでも反復可能な架構計画

架構計画はカーポート車1台分の幅普及サイズ、2.7mを1グリッドとし、それを徹底し反復。梁は120×270サイズで統一しています。
また、 グリッドを横断する大きな火打はその半割り、60×270サイズを製材することで部材ロスを減らし、経済効率の良い架構形式を実現しています。
2.7mグリッドごとに柱を建て、架構方式も標準化していくことで、この構成は建物がどこまで広がっていっても反復可能な持続可能性を持ちます。

架構模型。おおらかな一枚屋根を計画することで、この地の様々な環境を真摯に受け入れる建物のあり方を考えた。
架構計画はカーポート車1台分の幅普及サイズ、2.7mを1グリッドとし、それを徹底し反復。梁は120×270サイズで統一。 グリッドを横断する大きな火打はその半割り、60×270サイズを製材することで部材ロスを減らし、経済効率の良い架構形式を実現している。
隣に建つカーポートとスカイラインを合わせ、計画していくことで折板屋根で構成された特徴的な建物が街並みに溶け込む。

外観デザイン
一見バラックのような外観は、地域特性を考えていった上でのある種の成果品です。
既製カーポートの高さを意識し設定した低い軒高、折板屋根により構成された深い軒と1.3mまで立上げられたシールレスなモルタル仕上げの腰壁が、風雨や積雪から建物を守っています。
積雪時には腰壁は雪に沈み、真っ白な世界の中に構造躯体と軽やかな屋根が風景の中に浮かび上がります。
開口部からは流れる穏やかな風を年中受け入れ続けます。

室内から溢れる光が、街並みに彩りを与えています。

Photo by Ippei Shinzawa






Photo by Ippei Shinzawa